終売となった駅弁の記録 ~鉄宿別館~

既に販売が終了してしまった駅弁の記録を残します

日本の味博覧

日本の味博覧(JR東海)・・・侮れないJR東海の「高レベル幕の内弁当」

 

JR東海の100%子会社である、JR東海パッセンジャーズサービスが製造・販売する駅弁は、どれを食べてもほぼ外れがありません。というか、近年は製造能力が向上しているように思われ、今回購入した幕の内弁当である日本の味博覧も、素晴らしい駅弁だと思います。

外観を見て頂くと、実に清涼感の溢れるデザインです。「夏」と書かれている通り、春夏秋冬でメニューが見直されるものと思われます。1100円の価格の駅弁で、その細かい対応をやってしまうところに、今のJR東海パッセンジャーズの凄さがあります。

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東海道新幹線に乗った時に、車内でこれを開けてみましたので、ご覧ください。JR東海パッセンジャーズの駅弁は、JR東海の新幹線に乗って食べると、「気分」が出ます。

 

購入データ
購入場所
東京駅の東海道新幹線の改札口内、デリカステーション東京南コンコース店にて購入。
購入日時
2017年7月18日、正午12時少し前に購入。
価格
1100円(税込み)
製造・販売
株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズ
東京都中央区日本橋3-1-17

0120-919-212
https://www.jr-cp.co.jp/products/list

 

日本料理かが監修、隙の無い仕事ぶりに、大いに感心した駅弁

 

JR東海は、この日本の味博覧以外にも、幕の内弁当や特製幕の内御膳を販売しており、それぞれ侮れないレベルの出来上がりです。そしてこの日本の味博覧も、全く同様です。

今回の駅弁、日本料理家の田中博俊さんが監修していると、外箱に書かれています。田中さんは、日本料理店のなだ万で24年間も働き、東京サミットでは公式晩さん会の調理担当も担ったという凄腕料理人です。このような家庭向けの本も出しています。(⇒参考:なだ万・四季の旬菜膳)

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旬ごはんとごはんがわり

 

その料理人さんがアイデアを出して、各方面に指示を出して作らせたであろう日本の味博覧、大変レベルの高い幕の内弁当に仕上がっています。日本全国の幕の内弁当の、見本になると思います。

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見た目は、完璧ではないでしょうか。お品書きも以下のようにきちんと入っていて、見比べながら味わうのも、とても楽しいのです。

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まず真っ先に私が気になったのが、ご飯です。幕の内では俵ご飯にするケースが多いのですが、日本の味博覧の俵ご飯は、俵がやや立ち上がったような状態に入れられており、しかも奥の黒米の俵と手前の山菜生姜ご飯とでは段差があり、立体感が有るのです。

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これはどうやって盛り付けたのだろうと思いながら食べていたところ、なんと、手前の山菜生姜ご飯の下に、プラスチックの厚さ1センチほどのプレートが現れました。わざわざこんなものを下に置いてまで、ご飯の俵の高さを調整していたんですね。

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そのご飯、山菜生姜ご飯の表面に、なにやら振りかけられています。まさか、市販の「ふりかけ」じゃないだろうなと、ギョッとしました。あんなものを入れられたら、味が台無しになりますから。

でも、彩り胡麻、というものでした。それが山菜の緑と一緒になると、色彩の華やかさが際立ちます。奥側の黒米の紫色と合わせて、お見事としか言いようがありません。こんなに褒めるのですから、肝心のご飯の味も、もちもちしていてとても美味しかったです。

おかずとしては、ニシンの甘露煮と、銀ひらすの西京焼きです。それに厚焼き玉子豆の甘露煮はじかみなどを添えています。

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東海道新幹線を東京から乗車してニシンの甘露煮を食べるとは、想像もしていませんでした。見事な甘露煮で、パサパサ感は全くなく、こってりと甘辛の味付け加減もちょうど良く、ご飯が進みます。

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銀ひらすの西京焼きは、ニシンよりも脂分が多く、皮の部分から浸み込んだ西京焼きの旨みが口の中に広がります。これも、非常に美味い。先日食べた神田明神下みやびの会席花御膳の銀ひらす西京焼きのそっけない味とは、大違いです。

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ニシンと黒豆に隠れていた、揚げ真丈が出てきました。魚のすり身と山芋の揚げ物ですね。モチモチ感が半端ないです。一瞬、「デザートか?」と錯覚するほどの上品さのある味わいでした。

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更に侮れないのが、煮物です。かぼちゃ、ジャガイモ、里芋、椎茸、人参、高野豆腐、絹さや、赤パプリカで炊き合わせており、まず彩りの見事さに見惚れました。食べてみると、首都圏の駅弁の煮物の中では、間違いなくかなり上位に来ます。

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特に感心したのが、ジャガイモの煮物。こんな崩れやすい具材で大量生産の煮物を構成するのは、想像するよりも大変だったのではないでしょうか。見た目よりもはるかにホクホクした食感であり、ジャガイモの味もしっかりと残っていて、おいしゅうございました。

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メインとなるおかずと、2種類の俵ご飯とを「往復」して疲れを覚えた時も、気が利く味で疲れを癒してくれますね。胡麻ワカメです。ま、これは安上がりの原材料でしょうが、食べると明確に、味に変化をもたらしてくれるので、上手く考えられているなあと感心します。

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同じく、紀州南高梅と、干し大根わさび風味付けです。ししとうがこの位置に有るのは、もしかしたら煮物部分から移動してきてしまったのかもしれません・笑。梅干しも美味しくてね、しょっぱすぎず酸っぱすぎず、駅弁として最適なゾーンに入っていると思います。

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以上のように、東海道新幹線の流れるような車窓風景をぼんやりと眺めながら、日本の味博覧を細部までチェックしつつ、完食させていただきました。本当に、JR東海は侮れません。「夏」バージョンが大変美味しかったので、今後は「秋」以降も、食べ比べてみたいなと思いました。

幕の内弁当

幕の内弁当(JR東海)・・・新幹線駅弁として安定の味、ロングセラーとなるだろう

 

幕の内弁当は全国で最も普及した駅弁だと思いますが、かつては列車に乗って、車窓風景をのんびりと楽しみながら、その幕の内弁当を食べたのでしょうね。

そんな時代が彼方に遠ざかっても、駅では幕の内弁当が売られています。今回紹介するのは、JR東海パッセンジャーズが販売する幕の内弁当です。東海道新幹線では景色を眺めながら駅弁を食べる事ができるので、私の密かな楽しみでもあります。

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上の写真は、東海道新幹線の車窓の見所の一つ、新富士駅付近です。下りの新幹線に乗った場合、私はこの辺りで駅弁を食べ終わる事が多いような気がします。

下記、今回購入した幕の内弁当です。会社員時代を通じて、何度か購入している定番的な駅弁です。今回はかなり久しぶりの購入になります。

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今回の幕の内弁当を、東海道新幹線の車内で開封してみたところを動画に撮っておきました。なおJR東海パッセンジャーズでは、この幕の内弁当のほかに、上位バージョンとして特製幕の内御膳も販売しています。どちらも私、好きですね。

特製幕の内弁当は東京だけでなく名古屋や大阪でも売られているのに対して、今回の幕の内弁当は東京駅、品川駅、新横浜駅のみで売られている駅弁になります。

 

購入データ
購入場所
デリカステーション品川南コンコース(新幹線の改札口を入ったところです)にて購入。
購入日時
2017年5月27日、午前9時半くらいに購入。
価格
1130円(税込み)
ラベル表示

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製造・販売
株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズ
東京都中央区日本橋3-1-17
0120-919-212
https://www.jr-cp.co.jp/products/list

 

幕の内弁当としてのクオリティーは、何気にかなり高くて高評価

では、幕の内弁当を食べた感想でも書きます。見た目としては、「いかにも幕の内弁当」といった風であり、食べる人にとってはこの何とも言えない安心感が良いです。

 

【メニュー】

・ご飯 ・サーモン塩焼き ・みそかつ ・大根田楽 ・煮物(がんもどき、人参など) ・ジャガイモ甘辛煮 ・穴子天ぷらたれ漬け ・サツマイモ天ぷらたれ漬け ・玉子焼き 鶏つくね煮 ・油揚げ煮 ・蒲鉾 ・アサリの煮付け ・ピーマン揚げ ・梅干し ・漬物

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みそかつです。東海道新幹線が名古屋を通るからか、JR東海パッセンジャーズの駅弁で味噌カツを食べる機会は、割合多いです。関東人にとっては、このくらいがちょうど良いです。量が多いと、甘すぎて閉口します・笑。

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焼き鮭と玉子焼きと煮物、そして蒲鉾です。この部分は、いかにも幕の内弁当ですね。鮭が小ぶりでやや物足りないなという感じはしましたが・・・、

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鮭を箸で持ち上げてみると、下からなんと、穴子天ぷらのたれ漬けが出てきました。駅弁の天ぷらはどうしてもサクサク感が失われてしまいますので、だとしたら最初からしっとり感を売りにすれば良い訳で、このようにたれ漬けにするのは一つのアイデアかもしれません。

しかも、たれが絡んだ衣が美味しいです。穴子の味わいは少々弱くなってしまいますけれども、これはこれで、駅弁の一つの到達点だと思えるくらいの出来上がりです。なお、穴子天ぷらの上に見えているジャガイモの甘辛煮も、ホロっとした食感と共にタレの美味しさが口の中に広がって、とても美味しかったですよ。

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サツマイモ天ぷらたれ漬けです。穴子と同様の調理です。こちらもみそかつの下に置いてあり、みそかつを箸で持ち上げないと見えてきません。不思議な調製をするものです・笑。スペースの都合で、苦肉の策なのかもしれませんね。

これも、サツマイモの天ぷらをそのまま食べるよりもはるかに美味しくて、甘めのたれが病みつきになりそうな美味しさだと思いました。みそかつのたれが、すこし天ぷらに移ってしまっていますが、これはこれで天ぷらによく合っていましたね。

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東京地区限定らしい雰囲気を表現しているのは、アサリの煮付けですかね。噛みしめるほどにアサリの旨みが出てきて、小さな幸せを発見したような気持ちになりました。

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大根田楽と、油揚げ煮です。大根がとてもジューシーで、駅弁とは思えませんでした。油揚げ煮とも食べ合わせは抜群で、食べ飽きない副菜だと思います。

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最後に、ご飯です。俵ご飯に梅干しがちょんと乗っていて、幕の内弁当らしさが出ています。ご飯の炊き加減はちょうど良く、ご飯と全てのおかずの相性も抜群であり、これは食べる人の気持ちになって、よく考えて作られた幕の内弁当なのだなと分かります。

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この幕の内弁当、製造はどこで行われているのでしょうか? 日本レストランに外注しているのだと昔から思っているのですけど、あるいは崎陽軒、もしくは大船軒あたりでしょうか?

そんな部分で製造元との類似性や相異性などを考えつつ、幕の内弁当を食べるのは至福のひと時でした。東海道新幹線の駅弁だからと言って、決して不味い訳ではありません。

と書きましたところ、Twitter友達のきたさんから、こんなツイートをいただきました。なんとJR東海パッセンジャーズ、自社で駅弁を製造しているとの事です。

 

 

JR東海は、企業風土なのか、利用者が最大公約数的に評価するものを作り上げるのが非常に上手だと思います。駅弁事業においても、突出して超美味しいとか不味いとか、そういうものに当たる事はほとんどありません。

故に、未知の味を求めて旅をするには不向きな駅弁と言えなくもありませんが、決して大きく外さない安定感は、それはそれで魅力的なのかもしれません。

なすび亭弁当

なすび亭弁当(東京など首都圏各駅)・・・正直言ってかなり微妙

 

東京地区における日本レストランエンタープライズの経営する「駅弁屋」店舗でときおり見かけて気になっていた駅弁が、なすび亭弁当です。一風変わった駅弁だな、という印象です。

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外観は極めてシンプルで、中身が全く分からないのが大問題です。けれども新宿駅の駅弁屋頂ではこのような表示が掲げられていて、ようやく中身が分かりましたので、買ってみた次第です。

美味しい料理屋さんのシェフがプロデュースする駅弁といえども、レストランで作るものと駅弁として提供する料理とは、全く別物になります。同じくプロデュース駅弁の賛否両論弁当なんかは、けっこう残念な感じだったので、果たしてこのなすび亭弁当はどうなのでしょうか。不安が募ります。

ちなみにプロデュースしたお店としてのなすび亭のURLも、貼り付けておきます。恵比寿の人気のお店との事です。機会が有ったら、行ってみたいような気もします。

http://www.nasubitei.com/

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購入して、自宅で開封してみた動画は、こちらの通りです。どうも駅弁らしさが無いので、面食らいますね・笑。

 

購入データ(今回、私が購入した時の記録です) 
購入場所
新宿駅の駅弁屋頂にて購入。
購入日時
2017年4月9日、午後4時過ぎに購入。
価格
980円。

ラベル表示

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製造
株式会社日本ばし大増(日本レストランの製造部門の子会社)
東京都荒川区西尾久7-48-1
03-3810-7334
販売
株式会社日本レストランエンタプライズ
東京都港区高輪二丁目19番13号 高輪センタービル
http://www.nre.co.jp/ekiben/tabid/227/Default.aspx

 

有名人が考案しても美味しくなる訳ではないところが、駅弁の奥深さ

 

さて、なすび亭がプロデュースして、日本レストランが製造したなすび亭弁当のお味は、どうなのでしょうか。開封してみた感じでは、ごく普通に美味しく頂けそうな感じです。

「鶏つくね入り親子丼」と銘打っている通り、意外と有るようで無い、駅弁としての親子丼を作り上げたところが、アイデアとしては面白いですね。

 

【お品書き】

 

茶飯、玉子とじ、軟骨入り鶏つくね、鶏肉煮、玉葱煮、菜の花お浸し、じゃが芋揚、かぶ揚、人参揚、茄子揚、アスパラ揚、胡麻味噌、梅干、沢庵

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親子丼ですから、玉子の部分は錦糸卵などではなくて、ちゃんと卵とじになっています。駅弁に卵とじですから、汁漏れは厳禁です。したがって、卵とじでありながら汁気がほとんど無いという、不思議な卵とじが出来上がっています。製造には苦労したのではないでしょうか。

そして、軟骨入り鶏つくねが二個。これは食べるとコリコリしていて、美味しいなと思います。卵とじが決して美味しいとは言えないところが、なすび亭弁当の苦しいところだと思いました。

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鶏つくねの右側に目を向けると、鶏肉煮です。こちらも、特別に美味しいとは言いがたい味です。卵とじ部分も含めて、小学校の給食でも食べているような感慨にとらわれる味覚です。

鶏肉の駅弁には美味しいものがたくさんありますからね、いくら料理界の有名人がプロデュースしたとしても、冷めても美味しい鶏肉煮を徹底的に追求しないと、今後戦うのは難しいのではないでしょうか。

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ちなみに、卵とじがいちばん量の多い食べ物なのですが、これがこのように箸で取りにくいんです。茶飯と卵とじを取るだけで、だんだんと疲れてきます。

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副菜としては、ゴマ味噌に付けて食べる素揚げの野菜たちがユニークです。アイデアとしてはなすび亭弁当、決して悪くありません。沢庵に梅干しは、親子丼にも合いますね。

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全体として、アイデアは買いますが、肝心の味のほうが、まだまだ改善の余地が大いにあるなあと感じた次第です。東京は全国各地から美味しい駅弁が集結してきますから、敢えてなすび亭弁当を選ぶ必要性を感じられませんでした。

ただ、繰り返しますが、ユニークさは良いと思います。東京はちょっとこじゃれた料理を作り上げる街としては世界有数です。なすび亭弁当のチャレンジをもうちょっと進化させていただいて、真に舌を喜ばせてくれるような駅弁を期待したいです。

少しお洒落で、駅弁としての最大限の工夫を感じることができるものとしては、同じ日本レストランの販売(日本ばし大増が製造)する春夏秋冬の吹き寄せ弁当や大人の休日弁当のほうが、値段の違いはありますが数段上です。あのくらいの完成度を、今後期待したいですね。